薬膳の書

* * * 第三十五弾 * * 「栗(くり)」 * * *

栗ご飯、栗きんとん・・・秋を味わう!歴史が古く、歌にも詠まれる風情ある食材。

 クルミやアーモンドと同じように種子を食べるナッツ類で、堅果(殻果)類に属する。アジア、ヨーロッパ、北アフリカの温帯地帯に原生している。日本グリ、中国グリ、欧州グリの3種に大別される。日本グリは、日本と朝鮮半島南部が原産地。
 一つの株に雄花と雌花が咲く。6月頃が開花時期で、数個の緑色の雌花と黄白色の雄花の穂をつける。甘い香りが強く、独特の香りを放つ。秋の頃、いがの中に1〜3個、実を熟す。
 縄文時代には栽培されていたようで、遺跡からも炭化したものが見つかっている。日本で最初に文献中に栗が登場したのは「古事記」「日本書紀」では、栗の栽培が全国に奨励されたという記載がある。万葉集でもよく詠われ古くから親しまれている。栗の花は夏の季語となる。      −ブナ科−

−薬効・効能−
クリの栄養価は非常に高く、タンパク質、脂質に富み、豊富なでんぷん質(糖質)を含む。ビタミンCが多く、芋と同じように、でんぷん質に包まれているので加熱による破壊がほとんどない。ビタミンB1にも富み、糖質をエネルギー化し気力と体力をつける働きがある。カリウムも含み、塩分を体外に排出する。また、消化吸収もよい。
渋皮には、タンニンが多く含まれている。タンニンは渋みのもとで、緑茶やコーヒーにも含まれており、おいしさを引き立てる成分。抗菌作用がある。クリの樹皮を煎じた汁は、糖尿病に効果があり、葉の煎じ汁は、咳止めに効果があると言われている。

−クリの名産地−
クリの産地として有名なのは、丹波(京都府)と但馬(兵庫県)で、大粒のクリが生産され「丹波グリ」と呼ばれている。
日本で栽培されているクリの品種は、「丹沢」「筑波」「石槌」「銀寄」などがある。中国グリとの雑種である「利平」も生産されている。主な産地は、茨城、愛媛、熊本。山口、宮崎、埼玉などでも収穫量が多い。

−日本・中国・欧州品種の違い−
日本グリ 渋皮が離れにくく、果肉が割れやすい。風味がよい。
ようかん、まんじゅう、きんとん、ぜんざい、甘露煮など甘味を生かした料理やお菓子に向く。栗ご飯にして、秋の味覚も満喫したい。。。
中国グリ 別名:板グリ。中国北部原産。
日本グリより小形で、渋皮がはがれやすい。果肉はしまっていて、甘味が強い。焼き栗にむいており、「天津甘栗」で親しまれている。
欧州グリ コーカサス、西アジア一帯が原産。イタリア、フランス、スペインに分布。
日本グリよりやや小さめ、甘味は中くらいで、品質は優良。地中海気候に適しており、日本の気候には合わない。マロングラッセなどのお菓子原料やパン、焼き栗、肉料理(特に鶏肉)の付け合せなどに利用されている。

−栗あれこれ−

縁起物
戦国時代に、兵糧として用いられた。鬼皮(外の皮)と渋皮をむいたものを「かち栗」といい、
かち=勝ちに通じる縁起物とされていた。現在でも、お正月のおせち料理に利用します。


桃・栗、三年、柿、八年
桃と栗は芽生えてから三年、柿は八年で実を結ぶということ。

火中の栗を拾う
他人の利益のために危険をおかすこと。猿が猫をおだてて、いろりのなかの栗を拾わせて、猫が大やけどをしたという、ラ・フォンテーヌの寓話からきている。日本昔話では「さるかに合戦」でさるは、いろりにはいっていた栗がパチンとはぜて、目にあたり、痛い目にあったそうで。。。

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