薬膳の書

* * * 第三十四弾 * * 「はと麦」 * * *

はと麦の玄穀 精白粒
 全国各地の川沿いなどに自生する「ジュズダマ」と似ていて、ジュズダマの変種とされている。違いは、ジュズダマはうるち種ハトムギはもち種となる、またジュズダマほどかたくなく、指でおすと簡単に割れる。栽培されている地域は、熱帯から亜熱帯、温帯南部で、平均気温が10度以上で花穂がつく7〜8月の平均気温が20度以上で、年間降水量も1000ミリを超える地域、南アジアから東アジアと南米などで栽培されている。日本では、関東以西で栽培されており、収穫期は9〜10月。
                              −イネ科ジュズダマ属−

−歴史−
江戸時代末期までは、「ヨクイ」「トウムギ」「チョウセンムギ」「シコクムギ」などの名前で呼ばれており、明治時代になってから総称して「ハトムギ」と呼ばれるようになった。インドや東南アジア、中国南部で古くから栽培されており、食用や薬用に用いられてきた。
日本に伝わったのは、加藤清正が朝鮮半島から持ち帰った説や奈良時代の聖武天皇の代に中国の高僧鑑真和上が伝えた説などがあり定かではないが、江戸中期には日本に伝わっている事が確認されている。
名前の由来は「鳩が好んで食べる」という説や多くの収穫ができることから「八斗麦」と名付けられたという説もある。
日本での品種改良はほとんどされてないので、はっきりした品種がないが長い歴史の中で、形態や生態の異なったものがあり代表的なものは「岡山在来」と「中里在来」がある。一般的に栽培されているのは「岡山在来」で多収系統で晩生種。中里在来は東北地方の栽培に適しており早熟で穀粒も岡山在来よりやや大きいのが特徴。

−薬効・効能−
ほかの穀物に比べ、タンパク質を多く含み、アミノ酸のバランスもよく新陳代謝を増進させる効果がある。ビタミンB2が豊富で、玄米以上に含んでいる、ほかにビタミンB1、カルシウム、鉄、食物繊維なども多く含む。
民間療法では、イボトリに使用しており、体の中の水分や血液の代謝を促すので解毒させる効果がある。胃腸を整え、腎臓の働きを促し、水分代謝をよくするので、尿の出がよくなり、むくみの解消になる。常食すると肌がなめらかになり、シミ、ソバカス、肌荒れの改善に効果がある。アトピー性皮膚炎にもよいとされている。
滋養強壮の食品としても用いられ生薬名を「よくいにん」といい、お米の代わりに重湯やお粥などにして食べることにより、消耗した体力を回復する時に効果があるとされている。最近では、細胞の異常発育を抑える作用があり、ガンを抑える処方の中にハトムギを加えた薬もあるようです。

−料理−
精白したものは、お米と混ぜ炊いて食べる。お米の1〜2割程度の量が適量。水がきれいになるまでよく水洗いし、しばらく水に浸してから炊く。水加減はやや多めにするとよい。お粥にする場合は、ハトムギの量の7倍も水で3〜4時間コトコト煮る。製粉したハトムギ粉は、パン、うどん、お菓子を作る時に小麦粉とまぜて利用する。少量の水で溶いて粥状にすると、優れた病人食や離乳食となる。穀粒を殻つきのまま炒ったものを水を加えて煮出すと「ハトムギ茶」となる。
ハトムギ粉は、湿気を帯びやすいので、密閉容器で保存する。梅雨や夏期は冷蔵庫で保存するとよい。

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