薬膳の書

* * * 第二十九弾 * * 「どじょう」 * * *

コイ目ドジョウ科に属する淡水魚の総称で、天然記念物に指定された「アユモドキ」観賞用の「シマドジョウ」など、日本には10種ほどいる。北海道から九州の日本全域、朝鮮半島、台湾からアジアの東部に分布し、流れが緩く泥の深い平野の小川や、湖沼、水田などに生息する淡水魚。体は、円筒形で細長く、体は小さなうろこがあり、表面はヌルヌルしている。体長は15cmほど。
有機物や底生動物をエサとするが、成長してくると、藻や植物の茎・根を食べる。口の周辺には、5対(10本)のヒゲがあり、このヒゲで味覚を感じる。
冬の間は、エサを食べずに冬眠するのでやせている。旬は夏。
関東は、ドジョウの本場でもあり、日本の半分近くが利根川でとれる。地域によって、品質が異なり、岡山産−青口(最優良品である。)、愛知県産−赤口岐阜県産−黒口という。農薬の使用で、水田のドジョウは数が減っているが遊休田を養魚地として、養殖も行われている。また、輸入も多く、韓国産、中国産のものが出回っている。 死んだドジョウは、値打ちがなく、生きのいい太ったものがよい。また、調理法によって、大きさを選ぶようにする。臭みを抜くには、数日泳がせて泥をはかせる。漢字で「泥鰌」と書く。    −ドジョウ科−

−栄養・薬効−
「本草綱目」という書に「体を暖め、生気を増し、酒をさまし、痔を治し、さらに強精あり」と書かれている。昔から様々な薬効があるとして珍重されている。
リウマチや神経痛にドジョウの皮を貼ると効くといわれており、母乳の出もよくなると言われている。ウナギと比較すると、タンパク質は同じくらい含まれており、ビタミンB2、D、カルシウム、鉄分などは、ドジョウの方が多い。カルシウムは、ウナギの10倍ほどあり、丸ごと食べることの多いドジョウの栄養価は、ウナギよりも高いくらい。夏ばてには、かっこうのスタミナ源である。


ドジョウといえば、柳川鍋!(左写真図)
開いて骨をとったドジョウを下煮し、ささがきゴボウを鍋の下に敷き、その上にドジョウを並べて煮汁をかけその上に溶き卵をおとしたもの。ゴボウと一緒に煮ることで、ドジョウの臭みが消える。この鍋を最初に出したのが横山町の柳川という屋号のお店だったので柳川鍋と呼ばれるようになった。
他に、みそで下煮した丸ごとのドジョウをだし汁で煮ながら食べる「どじょう鍋」もある。(右写真図)
蒲焼にすることもあるが、ドジョウの習性を利用して鍋の中に生のドジョウと豆腐を入れ、煮ていくと熱くなりドジョウは冷たい豆腐の中に頭から突っ込む。火を熱し続けると、豆腐も熱くなり煮えて、中に入ったままのドジョウも煮えてしまうという鍋が「ドジョウ地獄」である


−どうして 「どぜう」 なの?−
ドジョウの料理店ののれんには、「どぜう」と書かれていることが多い。なぜ?
中世後期の文献には「土長(どぢやう)」の表記が見られることから、歴史的仮名遣いは「どぢやう」とされる。
浅草駒形の越後屋がドジョウ鍋を売り始めたのが、江戸のドジョウ料理の始まりとも言われており、開業当時、「どぢやう」と書かれたのれんでした。江戸の大火によって、店が類焼し、4文字は縁起が悪い!祝事や歌舞伎は奇数文字が使われている。ということで、看板書きの人に、「どぢやう」を3文字か5文字で表現するように頼み、苦労の末「どぜう」となった。それから店は繁盛し、江戸末期には他の店でも「どぜう」と書くようになった。ということで、正しくは「どぢやう」で、「どぜう」は実は造語なのです。

−どじょうと言えば安来節−
島根県安来市の民謡「安来節」にあわせて、どじょうすくいを踊る光景は有名ですよね。豆絞りの手ぬぐいをほおかむりし、腰にビクをぶら下げて、ザルでどじょうをすくう。これは、元来、特産の砂鉄を精選する作業をまねて踊ったのがはじまりと言われ、「土壌すくい」からきている。

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